そ ういえば。私は猫だけれども何故人となったのか理由を知らない。 「お前も馬から人になった の」 「違う。人になんかなっていない」 か なめは苦笑した。 「今の姿は人」 馬 は眉を潜めて反論する。「あなたに合わせているんだ」 あなたが人だから。 女 の眼を真っ直ぐ覗き込む硝子玉は曇る事を知らず、ひたすら澄んだ碧で瞬く。かなめはその2つの光にあてられて消えてしまいそうだと思った。また、私を消し た光は自らをも消滅させるのだとも思う。そのように儚く危ないものをひょうひょうと表出す男なのだ。 同 じ畜生として、猫が馬を試す。 「弱ったら人ではなくなる」 「仮 病といいたいのか」 「いや、お前が不調なのは本当」 「あなたも弱り化けられなくなったの」 「なる。たまに」 「僕 もなるかもしれない。こんな熱は何年ぶりか知らない」 褥に横たわった 体で、男は片手を顔に当て隠す。 かなめは立ち上がった。 「ここにいればいい」 乗 せた片手を軽く浮かせると、2つの光が影をさした。大きく開いたままかなめを見る。 「あ りがとう、優しい猫」 「今は人」 「猫 だよ。人なんかじゃない」 去り際 「一角獣、」 「一 角と呼ぶわ」 一角が笑った。 * 「密輸入者よ」 かなめは振り向かなかった 「認めろ、金の馬を異国売買したと」 血の気が引いていく うなじの黒毛がしおれる 雨が降る。 人々は傘をさし、犬や猫は水気を嫌い外に出ない。 私は畜生にもなりきれ無い。 「こ の水晶の角はいくらだ」 「鏡より何よりも高く売れるだろうな、この毛皮は上に献上するか」 「目 玉をくり抜くか」 「いや、このままにして芸をしこむのはどうだ」 私 は取り押さえられた。 |