そ ういえば。私は猫だけれども何故人となったのか理由を知らない。


「お前も馬から人になった の」


「違う。人になんかなっていない」


か なめは苦笑した。


「今の姿は人」



馬 は眉を潜めて反論する。「あなたに合わせているんだ」
あなたが人だから。



女 の眼を真っ直ぐ覗き込む硝子玉は曇る事を知らず、ひたすら澄んだ碧で瞬く。かなめはその2つの光にあてられて消えてしまいそうだと思った。また、私を消し た光は自らをも消滅させるのだとも思う。そのように儚く危ないものをひょうひょうと表出す男なのだ。



同 じ畜生として、猫が馬を試す。


「弱ったら人ではなくなる」



「仮 病といいたいのか」



「いや、お前が不調なのは本当」



「あなたも弱り化けられなくなったの」



「なる。たまに」




「僕 もなるかもしれない。こんな熱は何年ぶりか知らない」



褥に横たわった 体で、男は片手を顔に当て隠す。

かなめは立ち上がった。
「ここにいればいい」



乗 せた片手を軽く浮かせると、2つの光が影をさした。大きく開いたままかなめを見る。



「あ りがとう、優しい猫」



「今は人」



「猫 だよ。人なんかじゃない」


去り際

「一角獣、」



「一 角と呼ぶわ」



一角が笑った。












    「密輸入者よ」


   かなめは振り向かなかった


   「認めろ、金の馬を異国売買したと」


   血の気が引いていく
    うなじの黒毛がしおれる









雨が降る。
人々は傘をさし、犬や猫は水気を嫌い外に出ない。
私は畜生にもなりきれ無い。



「こ の水晶の角はいくらだ」

「鏡より何よりも高く売れるだろうな、この毛皮は上に献上するか」

「目 玉をくり抜くか」

「いや、このままにして芸をしこむのはどうだ」








私 は取り押さえられた。